理事長挨拶

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理事長挨拶

イラストレーションを取り巻く時代背景について考える

—皆様が安心して持てる能力を発揮できるために―

戦後、日本のイラストレーション業界を取り巻く環境は、主要メディア4媒体(TV、新聞、雑誌、ラジオ)と印刷分野による取引が主流となっていました。

とりわけ、首都圏をはじめとする大都市経済圏に所在する出版社、制作プロダクション、代理店などによる大型案件や度重なるコンペティションの開催は、イラストレーション事業者における創意工夫、切磋琢磨の機会をもたらし、高度な技術スキルの習得と多様な才能を開花させ、イラストレーションの活用の場を大きく拡げることとなりました。

しかしながら、バブル崩壊を経て、2000年代のリーマンショックに端を発した世界不況の影響により、我が国の広告業界のあり方は根底から揺るがされ、マスメディア広告における積算基準が厳しく見直される中、コンテンツの内製化や外注レート(単価)の縮小が加速しました。

同時に、取引環境の合理化とコンプライアンス意識の変容から、コンテンツ管理や契約条項の遵守を担保する名目で、「法人」対「法人」の取引関係を重んじる発注者が出てくるようになり、まとまったイラストレーションコンテンツを扱う代理業・エージェンシーへの委託や版権処理がなされた素材集の活用が進みました。

これにより、法人と比べれば相対的に信用に欠けると判断されかねない個人事業者が不利な立場に置かれると同時に、手工業的なオーダーメイドを基盤とした新しいイラスト表現への機運が損なわれた結果、作画レート圧縮といった経済的合理性が優先される考え方が主流になっていきました。さらには、異業種からの参入も増加するなど、伝統的なイラストレーション産業が失われかねない状況に至っています。

その一方で、既存の枠組みと入れ替わるように急速に勃興した新興メディアたるインターネットは、各種デバイスを進化させ、新世代クリエイターの台頭、物理的距離に縛られない地方事業者の増加、ニーズの多様化、それに伴う世代間による事業スキルの変化などを顕在化させることになりました。

また、市場においてイラストレーションに対する嗜好が細分化したことにより、マンガ・アニメをベースとした表現、RPG的な表現や課金制のカードゲームが大きな需要を創出し、Webサイト、スマートフォン/タブレット端末などの各デバイスへの適応需要を生み出しています。

このような時代の変革を受け、現在では、旧来の発注者に加え、新メディアを含む多種多様な業態が参入するだけでなく、受注側も出版系、広告系、Web系、プロダクト系、アート系、マンガ・アニメ系、同人系など様々なジャンルの絵を描けるイラストレーション事業者が入り乱れて市場を形成しており、新しい基準確立を必要とする時代を迎えています。

なかでも前述のようなインターネットの普及によって、事業所の地方化、並びに国外の発注者との取引が生じており、個人事業者であっても技術スキル、実務、法務知識等だけでなく、グローバル化への対応も含めた多方面のスキルアップが求められるようになっています。

このような状況下における、個人事業者を中心に構成されている業界団体として、組合員の皆様が安心して持てる能力を発揮されるよう、関係機関と協力しながら、支援策の具体化に取り組んでいます。

協同組合日本イラストレーション協会/代表理事
誉田哲朗
2014年5月