【絵本部会】出張レポート「北欧こどもの本の世界」

こんにちは、中日本支部の林よしえです。
中日本支部では、皆で楽しみながら絵本を知る「絵本部会」なるサークルのような活動をしています。
8月30日(土)大阪・関西万博で開催された「北欧こどもの本の世界」のイベントに、絵本部会を代表して参加してきたので、レポートします。

会場はアイスランド、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドが共同出展する北欧パビリオン。今回のイベントもこの5か国が主催です。
北欧の児童文学といえば、アンデルセン、ムーミン、長くつ下のピッピなど世界中で長く愛されているものも多く、私個人としては北欧のデザインやアートが好きなので、ワクワクします♪


2日間の北欧の文学デー。翌日は「北欧のミステリーの世界」のセミナーが開催されました
午前中はトークセッション。同時通訳で聞きました。
11:05~ 「アストリッド・リンドグレーンとトーベ・ヤンソンの遺産 – 難局と惨禍」
ストックホルム大学エリナ・ドルーケル教授
「ムーミン」でおなじみフィンランドの作家ヤンソンと、「長くつ下のピッピ」で知られるスウェーデンの作家リンドグレーン。二人とも同時代、第二次世界大戦禍の影響を受けながら作品を作ってきました。
恐れや不安な気持ちに寄り添い、多様性や平等を称えたヤンソン。作品を通して権力に反発し、子どもの権利や自由を主張したリンドグレーン。
彼女たちは、子どもだけでなく社会全体に影響を与えたそうです。

11:45~ 「子ども向けの本の書き方とは?北欧と日本、異なる視点と類似点」
リーセン・アドボーゲ氏(スウェーデン児童文学作家・イラストレーター)
宮田=ジャンシ真理子氏(ノルウェー児童文学作家・ダンサー)
菱木晃子氏(スウェーデン児童文学翻訳家・作家)
日本では、子どもには伝わらないだろう、残酷だろう、などとマイルドにしがちだけど、北欧ではありのままの社会や人間の姿(例えばパパママの夫婦間トラブルなど)が描かれる。子どもに媚びたり迎合はせず、一人前として扱うんですね。
一方で、どちらも神話や民話(日本では妖怪、北欧ではトロルなど)がどこか根っこにあり、活きているという共通点も。

12:15~ 「百聞は一見にしかず~絵本の挿絵を描く」
イェンニュ・ルカンデル(フィンランド絵本イラストレーター)
エンマ・アドボーゲ(スウェーデン児童文学作家・イラストレーター)
「内向的だった子どもの頃の自分にとって、第一言語が「絵」だった」とエンマ氏。ルカンデル氏も「絵はコミュニケーションの手段」と。
そう、絵本の絵は、単に上手いか下手かというより、表現すべきことが表現できているか、読み手に伝わるかなのです。
そのため他の人の文章に絵をつけるときは、まずテキストを読んで理解することや構想、スケッチにも時間をかける。一つの場面の中でカラーとモノクロで描き分けたり、映画のような表現をすることもあると、作例を見せてくれました。

12:45~ 「子どもの視点から書く」
ヨルン・リーエル・ホルスト氏(ノルウェー推理作家)
イルサ・シグルザルドッティル氏(アイスランド推理作家)
子どもが最初に読む本はその子に大きな影響を与えるので、大人向けよりも真剣に向き合って制作しなくてはならないとのこと。
親から与えられるのではなく自分から手に取って読みたいと思える、楽しいものを提供するのが大事。
なお北欧でも、若い人が本を読まなくなってきているそうです。子供に読ませるには、まず大人がスマホばかり見ていないで読書することだと。確かに!
13:15~ ランチ交流会&サイン会(北欧館屋上レストラン)
このイベントはランチ付きです!
肉・魚・ベジタリアンの3種類のお弁当からお魚をチョイス。
メインのスモークサーモンの他は意外に和風。美味しくいただきました。
食後、何人かの作家さんたちにサインをいただきました。


さて、午後は先着順で一般参加者も入れてのワークショップと朗読会です。
14:30~ エンマ&リーセン・アドボーゲ 姉妹によるワークショップ
「もし人間がいなければ、きみは何になりたい?」
ワークショップに参加するつもりだったのですが、なんてこと、サイン会でモタモタしてたら満席になってしまった!まあ見学はできたから良しとするか。
テーマは表題と微妙に違って「自画像を描く」
似てなくてもいいし、人間でなくても動物でも物でもいい。色使いでも自分を表現できる。今日の気分の自分を表現する、というお題でした。
テーブルには画用紙、色とりどりのマーカーの他、色紙も置いてあり、コラージュもできます。
お子さん含め、幅広い年齢層の参加者の皆さん。自由な発想でのびのびと、個性豊かな作品を作っていました。
ざっと見た限り似ている絵がひとつもないところが、まさに自画像だなあと感心!私なんぞが参加しなくて良かったかもしれません。


15:30~ 朗読会 『ムーミン谷の仲間たち』より『目に見えない子』
今年はムーミン誕生から80周年。
ムーミンのキャラクターたちはフィンランド語やスウェーデン語では何と呼ぶの?とか、作者のヤンソンについてのエピソードも聞きながら、物語の世界にひたりました。
ムーミンの原作は、児童文学と言うには大人っぽいというか、少しの毒気や侘び寂びのようなものがあって、そこがまた好きです。

16:30~ 朗読会 宮田=ジャンシ真理子氏
ノルウェーから来日した児童文学作家、宮田=ジャンシ真理子氏は、ダンサーでもあります。
彼女がストーリーを手がけた『みえこは踊る』は、一般的な枠に納まらない女の子を描いたお話。
音楽にのってダンスを交えながら表現豊かに、日本語で朗読してくれました。
観客まで巻き込んだダンスと朗読の融合は初めての体験で、とても新鮮でした!

イベント終了後、招待を送ってくださったフィンランド大使館とノルウェー大使館の広報担当の方と、少しお話しました。
フィンランドやノルウェーにもJILLAのようなイラストレーターが所属する団体があるそうで、近年ようやくクリエイターの地位が向上してきたとのこと。どこの国も同じなのかもしれませんね!
北欧館の外に出ると、夕方なのにすごい暑さ!そしてどこも大混雑!
夏休み最後の土曜日とあって、このレポートを書いている9月6日の時点で、この8月30日が入場者数最多だったとのこと!
万博2度目の私。暑さと混雑にめげそうになりながらも、パビリオンをいくつか周ったり、なんだかんだ夜まで楽しんだ長い1日でした。


登壇したエンマ・アドボーゲ氏作・菱木晃子氏訳の絵本「けがをした日」が参加者にプレゼントされました!
今回のイベントは、児童文学や絵本を切り口に、北欧の文化や子育てについて楽しく学べ、制作の参考にもなる良い体験となりました。
このような機会をいただけたことに感謝します。
大人もそうですが特に子どもにとって、海外の絵本や文学は、広い世界を知る入り口になると改めて思いました。
レポート:林よしえ



